戦後、日本は高度経済成長と呼ばれる急速な経済発展を遂げました。しかし、経済発展の代償として、各地で大気汚染、水質汚濁などの公害問題が発生しました。
その公害問題に対応するため、1967(昭和42)年8月3日に「公害対策基本法」が制定・施行され、環境問題の改善が図られてきました。しかし、近年、私たちを取り巻く環境問題は大きく変化しており、それに対応すべく「環境基本法」が1993(平成5)年11月19日に公布・施行されました。
1990年代から2010年頃にかけての環境問題は、生活の利便性を高めるため、様々な化学物質を用いた製品製造等による公害問題や経済活動優先の大量生産・大量消費・大量廃棄にともなうごみの不法投棄問題が主なものでした。当時、この問題に対応するため、「大気汚染防止法」や「水質汚濁防止法」の改正等により、ダイオキシン類やフロン類が規制され、「資源循環基本法」等により、廃棄物のリサイクルが進められてきました。
しかし、2010年代に入り、このような地域の環境問題だけでなく、化石燃料の使用等温室効果ガス増加による地球温暖化に起因する気候変動問題や、レジ袋等マイクロプラスチックによる海洋汚染問題等、地球的規模で未来に影響を及ぼす重大な問題が認識されるようになってきました。これらの新たな環境問題に対応するため、国連等を中心に世界中の多くの国や地域が参加した温室効果ガス削減目標の設定等、国際的な取り組みが行われています。
本市では、「伊賀市環境保全都市宣言」、「伊賀市環境基本条例」に基づき、「前計画」を策定し、その計画に沿った施策を推進するとともに、身近な河川の水質監視や環境保全に関する市民活動の推進により、良好な環境を保ってきているものの、温室効果ガスであるCO2の排出量は、現状維持であり減少傾向はみられていません。
また、21世紀は、二度にわたる世界大戦を経験した20世紀の反省のもとに「人権の尊重が平和の基礎である」という教訓を得たことから「人権の世紀」と呼ばれています。同時に、環境問題が地球上の全ての国や人々にとって共通の課題であり、国際的な連帯のもとに経済的・社会的な発展とも結びつけながら取り組む必要があることから、「環境の世紀」とも呼ばれています。
人権は誰もが幸せに人間らしく暮らしていくための大切な権利です。人類が共存できる環境を保全することはこの権利と密接にかかわっており、環境問題は、私たちの基本的人権と深く関わる問題なのです。
本市は、俳聖松尾芭蕉生誕の地として知られており、現在、俳句のユネスコ無形文化遺産登録の運動を進めています。そのなかで、身近な自然の観察や日々の生活を主題とすることにより、自然保護の心や人々の相互理解を生み、ひいては世界の平和へとつながる俳句の優れた普遍性や恒久平和への理念を掲げています。
実際に芭蕉は、伊賀から江戸に出た当初、神田上水の改修工事に現場監督のような立場で携わったといわれています。芭蕉は、自然の脅威や恩恵、様々な環境的課題を克服し経済的・社会的に発展する人々の知恵や努力を十分に理解した上で、自然環境や生活環境へのまなざしを独自の芸術に高めたといえるのではないでしょうか。
本市は、趣のある伊賀上野城を中心とした市街地と、その周りには農村地帯と里山があり、都市と自然が調和する魅力的な街です。この魅力ある本市の自然や地域の環境及びかけがえのない地球環境を次世代に引き継いでいくことは、私たち市民の責務です。
「人権の世紀」「環境の世紀」という言葉を、虚しい掛け声に終わらせないためにも、今回新たに本計画を策定し、地球環境保全のため、地域の課題に取り組むことで、国際社会の一員としての責務を果たせるように努めます。
なお、本計画の取り組みにあたっては、「持続可能な開発目標(SDGs)」(以下「SDGs」)、「PDCAサイクル(PLAN-DO-CHECK-ACTION)」などの考え方を取り入れ実施することとします。